ゲームセンターに女性を呼び込む人気コンテンツとして活躍している写真プリント機。
90年代のアトラスから発売されてゲームセンターに登場した『プリント倶楽部(通称プリクラ)』は大ヒットして各社様々な写真プリント機が登場しました。
プリクラの後継機種『プリント倶楽部2(通称プリクラ2)』はセガのアーケード基板「ST-V」を使用しています。
「プリクラ2から取り外した基板が余ってるけどいる?」というお誘いに「プリクラ2の基板はST-VだからそのままST-Vのゲームが遊べる!!」と思い、軽い気持ちで譲り受けた所、一筋縄ではいかなかったのが今回のお話……。
※結論だけ言うと、紆余曲折ありつつも最終的になんとかなってST-Vのゲームが遊べました!
#セガフェス2019 【大アトラス展開催中!】アトラスが1995年に初めてリリースし、平成の若者文化に多大なる影響を及ぼした“プリクラ”こと元祖「プリント倶楽部」。今回は、現存する希少な筐体「プリント倶楽部2」を展示。平成を代表する歴史的遊戯機を、ぜひその目でお確かめください! pic.twitter.com/nTpyEcN6fE
— アトラス公式アカウント (@Atlus_jp) March 30, 2019
『プリント倶楽部2』マザー基板
プリクラ2から抜き出して、カメラなどの特殊機能基板を取り外してST-Vマザーボードのみ残した状態です。
パッと見普通のST-Vマザーと全く違いがありません。
基板中央部に目立つ4つの白いコネクタがあります。
汎用基板としてアーケードゲームが動いているST-Vマザーボードには4つあるうちの左下コネクタ(CN5)に緑色の小さなジャンパ基板(839-0724)(通称ドングル)が取り付けられていますがプリクラ2基板には付属しません。
ST-Vの説明書を読むと「CN5にボード(No.839-0724)がないと動作しません。また、このボードを他のコネクタに接続しないで下さい。」と注意書きが書かれています。
プリクラ2から取り出したST-Vマザーボードにはこのボード(No.839-0724)が無いので、このままでは起動しません。
『プリント倶楽部2』ST-V用キャプチャボード
プリクラ2基板には写真撮影や画像加工用に専用のST-V用キャプチャボード(VIDEO BOARD FOR ST-V 837-12936)が取り付けられています。
キャプチャボードの上下四隅をみると、ちょうどST-Vマザーボードの白いコネクタと一致するピンが確認できます。
ST-Vのゲームを遊ぶのにキャプチャボードは必要ないので取り外しています。
『プリント倶楽部2』カートリッジ
カートリッジも通常のST-V用と全く同じ形状をしています。
ジャンパ基板(839-0724)を再現する
海外のコミュニティで「ST-Vのドングルが無い場合どうすれば良い」という議論が行われており「A1~A5をそれぞれB1~B5、A7~A27をそれぞれB7~B27に(同じ数字同士)接続で起動に成功した」と書かれている事をTwitterで教えてもらいました。
リンク:AUSSIE ARCADE | Calling on all owners of Sega ST-V.
プリクラ2のキャプチャボードを見るとCN5コネクタ部分がまさに「A1~A5をそれぞれB1~B5、A7~A27をそれぞれB7~B27に接続」されていました。
CN5コネクタを囲っている右上にA1,B1,C1と書かれていて、左上にはA32,B32,C32と書かれていることから、このコネクタのピン番号は右から左に向かって1~32番、上から下に向かってABCということがわかります。
これと同じ状態にすればST-Vが起動する、ということでジャンパーピンを大量に用意して刺してみました。
CN5コネクタに大量のジャンパーピンが刺さった状態です。
これでドングルが刺さった状態が再現されている「はず」です。
ドングル再現で動いた!(ただしプリクラのソフトだけ)
まずはプリクラ2専用カートリッジでテストした所、無事起動しました!
ただしプリクラ2の筐体や撮影に必要なパーツが接続されていないので撮影するところまででいくと「係員をお呼びください」というエラーがでてそこから先に進むことはできませんでした。
カメラもプリンターも係員さんもいないので、プリクラ2としての実験はここで終了です(笑)
ST-V用ゲームが動かない!!
プリクラのソフトが動いたのでST-V用のゲーム「ウインターヒート」で試した所、ST-Vにカートリッジは認識されたものの「ERROR ON CARTRIDGE.」というエラー表示が出てゲームの起動ができませんでした。
試しに他のST-Vカートリッジを試しても全てダメでした。
原因がわからず「もしかして形状は同じST-VでもBIOSがプリクラ2用と汎用ゲーム用で別なのかも?」と疑いはじめました。
ちょうどその時にヤフオクに「ST-V mod-biosチップ」というリージョン切り替えなど本来のST-VのBIOSに無い機能を追加したmodチップが即決で出品されていたので落札、試してみましたがBIOSを交換しても「ERROR ON CARTRIDGE.」のままでゲームの起動はできませんでした。
「biosじゃないとすると、このST-Vどこで自分をプリクラだと認識してるんだろう??」とかなり詰み状態になっていました。
ST-V用ゲームが動いたっ!!
ドングルは正しく機能している、Biosをmodチップに変えても動かない……と詰み状態で「プリクラ2基板はST-Vと同系品だけど互換性は無い」と結論づけようと諦めていた所で、改めてST-V用ソフト『デカスリート』の説明書を読み直してみたところ…
当ゲームの稼働条件
SYSTEM ASSIGNMENTSの
CABINET TYPE を 2P に
ALONE/MULTI を ALONE に
設定していること。
上記の稼働条件以外の設定内容
ならば、電源投入直後、
テストモード終了後にエラーを
表示し、ゲームはできません。
と書かれていました。
もしかして?とST-Vの設定画面を見てみるとプリクラ2用に「CABINET TYPE 1P」などなど上記とは大幅に異なる設定になっていました。
デカスリートに記載されている「稼働条件」に設定を変更して再起動してみるとゲームが起動しました!
それまで「うごかないなー」と見ていた『蒼穹紅蓮隊』の説明書にも全く同じ設定は書かれていますが『デカスリート』のように「テストモード終了後にエラーを表示し、ゲームはできません。」とゲームが起動しない旨の記載が無かったので完全に油断していました。
ジャンパ基板(839-0724)を再現する、パート2
ST-VマザーボードのCN5コネクタに直接ジャンパーピンを挿してドングル(839-0724)の動作を再現させていましたが、せっかくならばとドングルと同じものを作ってみることにしました。
ST-VのCN5コネクタを調べてみるとオムロンが製造している「DIN 41612 コネクタ DIN Connector(XC5G-9621)」というコネクタだと分かったのでパーツを注文、届いたコネクタにジャンパーピンを挿して簡易的なドングルにしました。
作ったドングルをST-Vマザーボードに挿して無事ゲームの起動を確認しました。
写真ではジャンパーピンを挿した状態で赤いジャンパーピンが大量に並んで高さが出ていますが、これで動くことが分かったので不要ピンをカットして該当箇所をはんだづけすることで飛び出る部分の少ない純正に近いドングルが完成しました。
リンク:ミスミ | 型番:XC5G-9621-A 販売ページ
まとめ:説明書って大事!ちゃんと読もう!!